第33章 すいーつ王子の甘い指導 〔小豆長光/R18〕
「えっ…あの刀が顕現したの?」
近侍に顕現を任せて他の仕事に就いていた審神者は、本日の近侍である乱藤四郎からまだ迎えていないいくつかのうちの一振りを、とうとう顕現出来たと誇らし気に報告を受けた。
「すぐ、挨拶に参ります…!」
審神者はやっていた仕事を中断し、急いで鍛刀部屋へ乱と向かった。
「失礼、します」
少し緊張した声音で部屋の外から声を掛け、ゆっくりと扉を開けた。
部屋の中央に静かに座って声を掛けられるのを待つ、成人男性の姿をした一振りの刀がいる。
「…あの…当本丸の…審神者、です…」
凛とした品を持ちそこに座するその刀…赤味のかった茶髪は短髪、がっしりした体躯に戦闘時の衣装を纏い、本当に顕現されたばかりかと思う程の落ち着きをみせる姿に、審神者は目を奪われる。
審神者の声掛けにゆっくりと振り向いたその刀は、審神者の姿を認めると品の良い顔から笑顔を浮かべた。
「わたしはあずきながみつ。うえすぎけんしんこうのかたなだったが…こんどのあるじはきみなのかい?」
その穏やかで低い声の口調に、審神者は慌てて小豆の前に座り頭を下げた。
「この本丸の主です。小豆長光様をお迎え出来て嬉しいです。ヒトの姿に慣れるまではいろいろ不都合もあるかと思いますが、他の男士たちに聞いて慣れてください」
丁寧に頭を下げる審神者に、小豆はくすりと笑うとその大きな手でがしがしと審神者の頭を撫でながら、「ああ、よろしくたのむ」とあくまで穏やかに言ったのだった。