第31章 独占の星 〔三日月宗近〕
「主、どうした?」
夜の本丸の廊下を歩いている主に気付いて俺は声を掛ける。
「あ、三日月、ちょっと喉が渇いて水をもらいに行ったところだよ」
俺が端に座って空を眺めているのに気付いたらしく、主が俺に言う。
「星を見てるの?私も隣、良い?」
「あぁ、無論だ」
俺の言葉に、隣にすとんと主が座る。
どこからかコロコロと虫の鳴く音が聞こえる中、俺たちは無言で星空を見上げる。
「…ここの空は綺麗だねぇ」
しばらくして空を見上げながら主が口を開く。
「そうか?」
「うん、もともといたところは、この空の半分以下しか星は見えなかったよ」
もともといたところ、というのは、審神者になる前に住んでいたところの事か。
「ここは特殊な空間でもあるからな。主のおかげで余計なものが入ってこない」
「…そっか…そうだね…」
しばらく無言で空を見ていると、また、主が口を開く。
「…三日月は綺麗だね」