第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
「本当だ、美味しい…」
太鼓鐘の言う通り、自分の淹れるお茶もなかなかだと自負していたが、鶯丸の淹れたお茶も濃さや温度がちょうど良く、また一緒に出された茶菓子もお茶に合わせた甘さで美味しく口に運んだ。
「とても美味しくいただきました。ごちそうさまです」
燭台切は心から鶯丸に感謝すると、鶯丸は軽く頷いて言う。
「また、おいで。いつでもお茶を淹れよう」
太鼓鐘と燭台切で礼を言って部屋を出ると、太鼓鐘が気付いたように問う。
「そういえば俺に何か用?」
「ああ、そうだ、一緒に万屋に行こうかと思ったんだけど…今日はもう良いかな。また他の日に行こう」
「買い物があったの?大丈夫?」
「うん、急ぎのものじゃないからね」
二振りで会話をしながら廊下を歩き、自分たちの部屋へ戻るのを、審神者が見ていた。
いつもの時間、いつもの生活、いつもの会話。
他愛ない行動、だけれどそれが刀剣男士の何事も無い幸せなひととき。
たまに起きる驚きな事柄は、本丸の生活の趣をちょっと変えるスパイスになる。
時間遡行軍のあの小さな短刀とはいつかどこかで戦うかもしれない、けれど。
それでも少しの時間、懐いた事を覚えて、覚えられていると良い。
全ての刀剣男士に幸せを…審神者は祈りを捧げるべく、自室の襖をそっと閉めた。
<終>