第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
そして次に餌食になったのは、毛利藤四郎だった。
淡い緑色の髪を揺らして鶴丸と大倶利伽羅の前に現れた毛利は、「おはようございます」と丁寧に挨拶をして、彼等を抜かして廊下を先に進んで行く。
「知らせたぞ」
大倶利伽羅が端末で先に待つ鶴丸と大倶利伽羅に知らせた、とぼそりと言う。
「よし、さて、あの子はどうなるかな」
にしし、と歩きながら両腕を腰にあてて笑う鶴丸に、大倶利伽羅は「案外えげつないな…」と呟く。
「ほら、行くぞ」
鶴丸が振り返り、立ち止まった大倶利伽羅に声を掛ける。
向こうの鶴丸とこちらの大倶利伽羅は、もう一組が待つ場所へ移動すると、包丁同様うろたえる毛利の姿を目にする。
「やあ、ハロウィンだぜ」
向こうの鶴丸が毛利にウィンクしながら登場すると、毛利は驚きながらやっと口を開く。
「え…どうして鶴丸さんと大倶利伽羅さんが二振り…ん、鶴丸さん、その首の…」
「可愛いだろ?時間遡行軍から拾ったチビだぜ」
動くな、と言っておいたにも関わらず、短刀は大きな目をくるりと回しながら「ふしゅ」と鳴いた。
「!?」
毛利は目をいっぱいに見開き、短刀を指さし口をぱくぱくと開いたり閉じたりし、驚きのあまり何もしゃべる事もなくそのままことんと意識を無くした。