第26章 小さな愛を育つ 〔山姥切国広〕
「主…緊張しているのか?」
俺が声を掛けると、俺の胸に顔を埋めたまま主は小さく頷き、俺はそんな主が愛おしくてならなかった。
俺は益々ちからを入れて抱き締めながら言った。
「主、俺を選んでくれて俺は嬉しい」
ぴくりと小さく肩が動く。
「主が俺を求めるようになるまで俺は待つ」
それに応えるように主はまた小さく頷く。
主が少しずつ成長している。
自身に戸惑いながらも、俺を選んでくれた事に俺は内心喜ぶ。
そんな主を焦らせてはならない、と俺は思う。
主の心も成長し、俺を欲しいと望むようになってから、俺のものにしていこう。
ひとの成長は俺たちにはたったひととき。
だから数年なぞほんの一瞬。
主のまだ骨ばったからだを抱き締め、それがやがて柔らかな感触になるのを待つのも一興。
何より俺が嬉しかったのは。
主が俺を選んでくれた事で、俺の持つ偽物のレッテルが剥がれ、俺が俺でいられるのでないか、そう思えて俺は主の名を口にした。
「これからどの刀より愛そう…雅…」
<終>