第21章 愛と破壊 〔加州清光/R18〕
「どこ、行くの?」
出掛けようとしていた主へ声を掛ける。
靴を履いていた主はこちらへ顔を向けて笑顔を見せる。
「審神者の健康診断なの。政府へ行ってくるね」
政府?近侍も連れて行かずに?
俺は疑問に思ってそれを問うと、主はちょっと困ったような表情を浮かべて言う。
「近侍を連れて来ず、一人で来るようにって通達があったんだよね。きっと待ち時間が長くなるから、大勢の刀剣たちが居るとうるさいのかもしれないよ。それに今日の健康診断は、女性の審神者だけみたいだし」
本当は心配だけど、主がそう言うならそうかもしれない。
俺はそのまま主を送り出した。
「主がいない…?」
「政府へ健康診断で出掛けたまま戻って来ないんだ」
「どういう事だ?何故一人でなんだ?」
本丸内で主が戻ってこない事に大騒ぎとなり、最後に玄関で会った俺はいろいろ聞かれる。
俺が知っているのは、近侍を連れず、一人で健康診断の為、政府に出掛けたという事だけ。
さすがに理由が理由でも近侍を連れて行かない、という通達はおかしい、と他の刀剣たちが言い出し、何人かで政府へ行くぞとまで大騒ぎになった。