第18章 ××しないと出られない部屋その2 〔薬研藤四郎/R15〕
ゆっくり起き上がる大将の様子が背中でわかる。
「やげ、ん、くん…」
引き戸を閉める音に被せて、大将が俺を呼ぶ声がしたがそれを無視し、唇の唾液を白衣の袖でぐいと横に拭き取ると、何もなかったようにその部屋から離れた。
大将には俺の心はわからないだろう。
精神的にはおとこだが、短刀であるがために幼いこどもの姿で顕現している。
そんな俺でも大将が好きになってくれて、俺が一番の刀にならない限り、これ以上の行為はしない。
見た目幼くても、薬研藤四郎という粟田口の刀だ。
こんな強引な手段ではなく、大将自ら俺の前で自分の衣類を脱いでくれるようになったら。
その時は遠慮なく頭から爪先まで、全身喰いまくってやる。
主の出ていった後、こんのすけが姿を現す。
「この本丸も合格でしたが…短刀相手は厳しいものがあるようですね。これは政府に報告致しましょう」
呟いたこんのすけが消える。
時の政府にはこの案件について『相手によって問題有り』とした。
-雅の眼差しが薬研を見る時、おんなの顔を誰にも気付かれないよう見せている。
-誰も気付かない、その小さな表情の変化に一番戸惑っているのは雅だろう。
-いつか、薬研に堕ちる?
-それも近そうな今日この頃の、この本丸の主の様子だった。
<終>