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刀剣純情伝 《刀剣乱舞/短編集/R18》

第14章 重圧 〔物吉貞宗〕


私の言葉に目をぱちくりさせる物吉は、ぱちぱちと瞬きをした後、私の言葉を理解したらしく驚いた表情でこちらを見る。

「ぼくは幸運を運ぶ理由で呼ばれたのではないというのですか?」

「幸運は自分たちで掴むものだよ。物吉は物吉だから来てもらったの。徳川家康が幸運を運ぶ短刀だって大切にしたのは知ってるけれど、それが理由で来てもらったんじゃないからね。だから幸運を運べているかどうか、そんなの気にしなくて良いよ。物吉がここで楽しくみんなと暮らせていれれば、私はそれが嬉しい」

私が大きく笑うと、ようやく物吉も品の良い笑顔を見せてくれた。

「ぼくがここで楽しく暮らす…」

「そう、そうだよ。楽しく暮らしてくれれば良いよ。あ、勿論出陣の時はがんばってもらわないといけないけどね」

「それは勿論です」

真面目に答える物吉が本当に可愛くてならない。

私は物吉の頭をぽんぽんと軽く撫でると、彼の手を取り一緒に立ち上げる。

「よし、じゃあ、粟田口の子たちと、一緒におやつタイムにしよう」

「はい、おともします」

私の言葉に物吉は笑顔を見せた。

粟田口の部屋へ足を運び、一緒におやつを食べ、彼等と遊ぶ物吉の姿を見ていると、彼の『幸運を運ばなくてはならない』という重圧に押しつぶされてないか、さっきまでそれを心配していたけれど、私の言葉で心が軽くなってくれたなら良いなと思った。

物吉貞宗、貴方は徳川家康には幸運を運ぶかたなかもしれないけれど、この本丸では気にせず楽しく過ごしてね、そう、心から私は彼に思うのだった。


<終>
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