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刀剣純情伝 《刀剣乱舞/短編集/R18》

第14章 重圧 〔物吉貞宗〕


「物吉?どうしたの?」

廊下でぼんやりと外を眺めている物吉貞宗を見掛けて、私は声を掛ける。

「あ、主さん、何でもないです…」

何でもないと言いながらもその表情は冴えない。

私は隣に座っていいか聞いてから座り、端正な物吉の横顔を覗きこんだ。

「なぁんか気になっている事が有るって顔してる」

私が言うと、物吉は苦笑して私のほうへ顔を向けた。

「主さんには誤魔化せませんね」

そして言った。

「ぼくは幸運を運んでくると言われてますが、本当に今も出来ているのでしょうか」

「今も?」

意味がわからず聞き直す。

「はい。ぼくは徳川家康公が出陣する際、ぼくを帯同すると勝てるというので、物吉という名前を付けられ大層良くしていただきました。でも物吉の名前通り、この本丸でぼくは幸運を運んできているのでしょうか?」

ためらう物吉の表情に、言いたい事を理解した私は、しかしながら慰めるのではなく叱った。

「何を言ってるのよ、幸運なんて運んでこなくて良いんだよ。物吉は物吉として、ここに居るだけで良いんだから。貴方が幸運を運ぶから本丸に呼んだ訳じゃない。貴方を貴方として望んだから来てもらったんだからね。そこんとこ間違えないで?」
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