第13章 いたずらから知る愛 〔和泉守兼定/R18〕
「沖田総司?幕末の新選組のひとだよね?あ、加州と大和守の刀の持ち主だっけ」
主は歴史にすごく詳しくはないようだが、最低限の事は知っているようだ。
「そう。俺と堀川国広は沖田総司の兄貴分だった土方歳三の刀だったんだ」
俺が自分の刀の持ち主の名前を出すと、主は目をぱちくりさせて片手を握り、もう片手の手のひらをぽんと叩いた。
「あ、土方歳三、知ってるよ。あの時代の人にしてはイケメンだよね!」
おい、そこかい。
突っ込みそうになるが、話しがズレそうになるのでそれは無視しておいた。
「ちなみに長曾根虎徹は近藤勇の刀、陸奥守吉行は坂本龍馬の愛刀だった」
「ふぅん、あれ?そうすると、長曾根は仲間だけど、陸奥守は敵だったって事?」
首を傾げる主に俺は頷く。
「ああ、まぁ持ち主が違う思想の持ち主だったから敵同士になっちまったって事だけど、もともと刀自体の俺たちには敵とか味方とか、そういう考えは無いんだよな。俺たちは所詮モノだからな」
自嘲気味に俺は自分たちはモノだと言ったところ、主はむすっとした顔をして俺の両頬を両手で挟み、ぎゅうと頬を潰した。
「ほぉい、にゃい、すりゅんじゃ」(おい、何、するんだ)
「モノだなんて言わないで。そりゃ人間ではないかもしれないけれど、ヒトと同じように感情を持ってるでしょう?少なくとも私はみんなは神さまだと思っていて、ただのモノだなんて思ってないよ」