第14章 魔女と空白
10億円強盗は無事に成功
でも
その後の爪が甘く
仲間内で問題が起こり街の探偵の力を借りることになった
結局
計画は完璧だったのに
みんな死んじゃった
残ったのは私だけ…
『それ以上行くな』
組織との待ち合わせ場所である港を歩いていると
後ろから声が聞こえた
聞き覚えのある
優しい人の声だ
『殺されるぞ』
「えぇ、その準備はできているわ」
『そうだとしてもだ…行くな』
声の主は頑なに前へ進む事を許してくれない
『お前の命の保証ができなくなる』
「それでも行くわ…だって、私にも守りたいものがあるんだもの」
姿は見えない
恐らく隠れているのだろう
それでも、近くに感じるその存在
『そうか…、止めても無駄か…』
「ありがとう。咲哉さん…貴方がいなかったら私は何も出来ないまま死んでいたわ」
『礼には及ばない。一つ目の約束は守れないが、最後の約束は必ず守るさ』
「ありがとう」
咲哉さんは最後の最後まで
私に優しかった
そして
覚悟を決めて
一歩踏み出す
この先、どうなろうと
私の運命であり
私の生きた証
ねぇ
大君…私、少しは強くなれたかな?
一つの銃声を
船の排気音がかき消した
「さ、最後に私の言う事…聞いてくれる?」
案の定、組織に裏切られ銃弾を浴び
私は虫の息
そこへやってきた街の探偵事務所のボウヤ…
いや、探偵の工藤新一君に私の思いを託す
「10億円の入ったスーツケースはホテルのフロントに預けてあるわ…」
「そ、それを…奴らより先に取り戻してほしいの…」
痛い…
苦しい…
でも
後もう少し…だけ…頑張れ私…
「もう奴らに利用されるのは…ごめんだから…」
最後に浮かぶのは妹の顔
大君の顔
そして、咲哉さんの顔
「そうだ…もし、ボウヤが金色の目をした優しい女の人に出逢ったら伝えて欲しい…たくさん…ありがとうって」
もぅ…限界かな…?
声がが上手く出てこない…
大君にも話したかったなぁ…
咲哉さんのこと…
たくさん…自慢してやりたかった…
「頼んだわよ…小さな探偵…さ………」
パトカーの音が聞こえる…
遠くなる意識の中で幸せなみんなの未来を願った