第13章 魔女と賭け
FBIはミスをした。
その情報はすぐに幹部達へ渡る
短い会話の後
電話を切ったジンは短く言い放った。
「引き返せ」
「なんでですかぃっ!?兄貴っ!?」
「例の場所に裏切り者と鼠が彷徨いていると連絡があった」
「裏切り者と鼠?」
黒いポルシェ356Aの車内
ウォッカはよく分からないといった顔をしている
対して
アイリッシュは表情を全く変える事なく
その視線はじっと窓越しに過ぎ去る街並みに向けられていた。
「裏切り者はお前のお気に入りたぜ?アイリッシュ?」
分かっていたはずだと言わんばかりに発せられる言葉
ジンは振り向きざまに名前の方へ銃口が向ける
『私のお気に入り?私のお気に入りはジンだが?』
名前は銃口から逃げることなく
逆に額に近づけながらジンを煽るように返す
「ありがてぇー言葉だ」
『どういたしまして』
「だが、疑わしきは罰せよだアイリッシュ」
『あぁ、分かっているさ』
そう言うと名前は瞳を閉じた
同時に
乾いた音は車内にだけ響き渡る
サイレンサー付きの銃なだけあって
静かな銃声だった
弾丸がアイリッシュの額を打ち抜く
鮮血が飛び
その身体が力なくシートに落ちた。
「兄貴っ!?なにして!?アイリッシュが何したってっ!!?」
「コイツは知っていたはずだ。鼠と…いや、裏切り者のライとは仲良しごっこをしてたみてぇーだしな」
「とういうことはアイリッシュも裏切ったってことですかい!?」
「焦る事はねぇ。ゆっくり話を聞かせてもらうぜ。アイリッシュ」