第12章 魔女と夜空
正義とは
悪とは
なんであるか
昼間とはうって変わり
涼しげな夜風
静かな街
私にはやはり
昼間の騒がしさよりも
こちらとの相性が良い
零には初めから全て話すつもりでいたが
最後の最後に隠し事をしてしまった。
零はまだまだ子どもだ。
我ながら大人気なかったと感じる。
零が知りたがっていた電話の相手はライだった。
近々、ジンをターゲットにしたFBIの作戦があるらしい
ジンをターゲットにするとは
FBIの自信に驚かされる
一つのミスすら許されない
それどころか
ミスを犯さなくても成功する確率はゼロに等しいだろう。
ここで疑問が浮かび上がった
何故、この事をわざわざ私に報告したのか…
私はライに信用されているのか?
組織の人間である私がジンに話す可能性もあるのに…
まさか、私を試しているのか?
まったく…笑いの出る話だ。
自身の電話を操作し発信する
すると夜中なのにも関わらず。すぐに繋がった。
「どうした?」
『ライ、お前に確かめておきたい事があってな』
心地良く低いライの声が耳に響く
「例の事か?」
『そうだ。しかし、今日は疲れた。日を改めて連絡をくれ。私は長期休暇中だ。いつでも構わん』
「分かった。ところでアイリッシュ、また無理をしたな?」
『無理ではない。無茶だ。』
「同じ事だ。話を聞くだけで寿命が縮むかと思ったぞ?」
『ハハッ!すまない。それでは私の寿命を分けてやろう』
「後ほどゆっくりと聞かせてもらうからな」
『あぁ、わかったよ』
通話を一方的に切る。
用件は伝えた。
それだけで十分だ。
さて
ライからいつ連絡が来るか
その時が楽しみだ。
楽しみ?
今、私は楽しみだと思った。
なぜだ?
ライから作戦内容を聞くことが楽しみなのか?
ライと話せることが楽しみなのか?
それとも
ライと逢えることが楽しみなのか?
ライだから?
まさかな
あぁ、きっと疲れているせいだろう。
身体が重い。
今日は零と会うために苦手な昼間必死で公安へと足を運んだ。
何度も後悔する、車で行けば良かったと…
待て…
私はなぜ、そこまで必死になる必要があった?
ライが楽しみで
零のために必死で
私はおかしくなったのか?