第4章 魔女と人間
シンと静まり返った闇の中
まるで
劇場のスポットライトに照らされているように浮かびあがる
真っ赤な血の絨毯に横たわる黒い魔女
それは絵画のように美しく残酷な光景だった。
「アイリッシュ!!!!」
ライは自分の立場も忘れて叫んだ。
アイリッシュに駆け寄ると血塗れになった体を抱き上げる。
「おいっ!アイリッシュ!!」
そして
必死にその名を呼んだ。
『・・・なんだ?』
「!?!?」
アイリッシュはゆっくりと瞼を開いた。
ライは動揺を隠せずにいる。
『勝手に人を殺 すんじゃない。私は死んでいないぞ?』
クスクスと笑いながらアイリッシュはライの頬を小突くと子供のような笑顔を見せた。
「本当に生きているのか?」
『そうだ。ふふっ、まったく・・・お前の目は節穴か?』
ライの反応が面白くて堪らないのか笑いが止まらないアイリッシュ
『ふふっ、すまない笑い過ぎた。お前は私を心ぱっ!?!?』
笑いを堪えつつアイリッシュが言い終わる前にその体がふわりと浮かぶ
これが俗に言うお姫様抱っこというものか・・・と自分を抱き上げたライの方に顔を向けた。
すると
予想以上にライの顔がすぐ近くにあった。
吐息を感じるほどの距離
一瞬、心臓が大きく脈打つ
『だから、すまなかったと言っているだろう?』
アイリッシュは照れ隠しのように視線を逸らし
拗ねた様に言った。
「俺はお前に驚かされるばかりだからな」
たまには驚かしてもいいだろうというように笑みを浮かべるライ。
『・・・・人間め。私は疲れた!寝る!車はあの倉庫の裏だ!!!』
からかわれたのが気に入らないのかアイリッシュは完全に不貞寝を決め込んだ。
そっぽを向いて、目を閉じるアイリッシュ
そのどこか憎めない可愛らしい魔女の姿を見て
優しげに微笑むライだった。
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魔女と人間 ①魔女の不貞寝