第3章 嘉門妃良理の独裁論
「今から遙真先生ん所に行くけど、大丈夫か?」
祥は車を運転しながら私にそう話しかけた。
「なんで遙真先生まで?」
「妃良理は、婚約者を消している。
俺が仕事中に見つけたんだが、嘉門妃良理の婚約者にあたる、嘉門真輔(よしかどしんすけ)が戸籍ごと消されている。多分権力と金で消したんだろうな。誠也先生と結婚するために。」
どうやら妃良理の兄が戸籍管理課にいるらしく、そこでも大きな動きがあったのではないかと。そう祥は言った。
暫くしてひとつのカフェに入る。そこでは既に遙真先生が待っていた。
「すいません、コーヒー2つと紅茶を1つ。」
祥が私達の分の飲み物を頼んでいる間に、遙真先生はスマホを私たちに見せた。
「誠也には、この権力の話はしてある。
あいつは、楓を巻き込まないためにある人に婚約者のふりをしてもらうと言っていた。」
「婚約者のふりって……相手にも婚約者が……」
「彼女は、風間優弥(かざまゆみ)。誠也の姉であり、本来の真輔の婚約者だ。」
「本来ってことは、権力がある者や妃良理の望みだけで戸籍を操って私欲を満たしているということ?」
翠璃の疑問に遙真先生は何も言わずに頷く。
「とりあえず、戸籍の洗い出しは俺と祥で済ませるつもりだ。
楓は、翠璃の所にいて隠れてて。あいつは何をするかわからないから。」
「でも……。」
「言いたくはないし、あいつからもなるべくその時が来るまで言うなって言われてるんだが仕方ない。
前世でお前と誠也が死んだのは事故死だ。
楓を庇い共に車に轢かれて死んだ。
妃良理の手によって。
あいつは権力で揉み消された殺人犯だ。」