第3章 嘉門妃良理の独裁論
マンションから少し出たところで見慣れた後ろ姿を見つける。
嘉門妃良理だ。間違いない。
茜色のルージュ、弁柄色のネックレス、猩々緋に染められた一筋の髪。
彼女が振り返ると同時に思考が停止する
「あら、貴方。お久しぶりね。ここになんの用?」
「それは妃良理さんもじゃない?あなたにこんな庶民的なところは向いていないわ。」
「何よ、自分の旦那を迎えに来て何が悪いの?」
相変わらずの腹立つ口調に思わず、燃えるような怒りを覚える。
法律って知ってる?とでも言えばいいのか。
「あぁそうなのね。じゃ、わたしは翠璃と遊ぶ約束をしているから。」
「あんた、もしかして、誠也先生と関わりがあるんじゃないでしょうね?」
悪事を咎められたかのように、体を強ばらせる。
「そんなの、知らない。関係ないもの。」
そう言って彼女をすり抜け、祥の運転する車へ向かう。
互いにすれ違う時、相手を恨むかのように舌打ちをし合って。