第2章 SS
◆ヴェイン/バレンタイン
朝一番、控えめなノックとともにヴェインがやってきた。前に私が食べたいと口走ったチョコプリンを作ってくれたんだと。「本当ヴェインはいい奥さんに…」「ならねぇッて!」なんてふざけていると、突然船が大きく揺れた。
こういう時鍛えている者とそうでない者の差が出る。私達は前者で、プリンは後者だった。服を汚してしまったことを謝り私を気遣うヴェインだがどこか少し悲しそうで。私は鎖骨のプリンを指で掬って口へ運ぶ。うん、美味しい。「ねぇ、ヴェインも食べる?」悪戯に笑って差し伸べた指は──