第4章 時々かき混ぜながら、もったりしてくるまで冷やします
「ありがとう…秋也くん」
私はなるべくにっこり微笑んで、なるべくしっとり柔らかく、差し出されたそれを彼に突き返した。
「気持ちだけ貰っておこうかな。秋也くんに好きって言って貰えるのは、とぉっても嬉しいけど。ほら、私、結婚してるしね。旦那様がね、いるから……」
秋也くんは、スンと真顔になった。そうしてゆっくりと、チョコレートを台所の天板の上に置いた。
空気が重い。
傷つけないように、明るく言ったつもりだったけど、ダメだったかなあ。
私がドギマギしていると、秋也くんはチョコの包みを開け始めた。リボンをといて、袋の口を開け、トリュフをひと粒、指でつまみ上げた。
それからゆっくり私の方を見ると
「食べて」
と手を伸ばしてきた。