第8章 初めての朝
「あ。そうだ。お返し、何がいい?」
「え?」
「なに欲しい?」
「??」
「バレンタインの。お返し。ホワイトデーに。何がいい?」
「…」
「ね」
「…もう、十分」
「え?」
「…大野くんの気持ち、聞けただけで…十分」
「や、遠慮しないでいいから。何でも欲しいもの、買ってあげるよ?これでも、結構お金持ちだよっ?」
笑いを誘ったんだけど、葉月、うつむいたままで。
「…ううん。ホントに。も、これ以上なんて…」
あ。あ~あ~…
「また泣くぅ…」
「ううぅ…っ」
「…オイラも泣いちゃうよ?すぐもらい泣きしちゃうんだよ、この頃」
「…ふふっ。ホントに泣きそうな顔になってる…」
「ううう~っ」
「あっはははははっ」
…うん。やっぱり、葉月は笑顔がいい。つられる様に俺も笑って。また二人で顔見合わせて笑った。