• テキストサイズ

[R-18]娼婦の唄【轟 焦凍】【爆豪 勝己】

第2章 ある少年の話











その日はアブラゼミがけたたましく鳴く、夏の暑い日のことだった。
いつも通りすずめが川に来るのを待ち、少し大きな岩に座っていた。
今日は何を獲ってやろうか。
そんなことを思っていると、川から少し離れた道で、複数人の大人達と一緒に幼い子供が歩いているのが見えた。

よく見慣れている 奴らは人買いだ。

誰かが売られる。誰が売られるのか。
興味本位でじいと見つめてみると、側を歩く女に思わず目を見開いた。

「すずめ!!」

声を荒げ、すずめの方へと走る。
なんでだ。なんであいつが。
すると大人達は俺に気付いたようで、すずめに何かを言った。
少し遅れて、すずめが俺へと視線を向ける。
長い前髪から覗く黒い美しい目に息を呑む。
大人達はすずめを置いて、何処かへと歩き出し、道には俺とすずめ二人だけになった。
「お前、売られたのかよ」
拳を握りしめる。
するとすずめは、俺と年も変わらないはずなのにどこか達観した綺麗な顔で曖昧に微笑んだ。
それ以上、何かを聞く気にはなれなかった。
すずめの腕を掴んで
「逃げんぞ!!」
引いて
それでもすずめは、動く気が無くて。
「………ありがとうございます爆豪様。でも、いいんです」
すずめと目が合う。
澄んだ綺麗な黒い目。
その目に宿るのは、絶望じゃない。
「うちには妹と弟が5人います。父と母の稼ぎだけでは、どうしても食っていけないんです。なら、私を売った金で、少しでも楽に」
「知らない男に抱かれんだぞ!!いいのかよ!!」
「構いません。それが私の運命だっただけです」
その目には 覚悟が宿る。
それを 俺は止めることができない。

俺は俺が 不甲斐ねえ。

「今はできねえ、でも、俺がお前を身請けしてやる!!それまで待ってろ!!」

そう言うと、すずめはその目を大きく見開いて
綺麗に、本当に綺麗に

笑って





/ 32ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp