• テキストサイズ

[R-18]娼婦の唄【轟 焦凍】【爆豪 勝己】

第4章 感謝を











翌朝のことです。
朝食を食べ終えた坊ちゃんの膳を片そうとすると、文台に向かい本を読む坊ちゃんの姿が、視界の片隅に入りました。
「ーーーー…………あの、坊ちゃん」
ぽつりと呟くと、坊ちゃんは本を読みながら答えます。
「どうした」
一拍、私は覚悟を決め 怒られるのを承知に焦凍坊ちゃんに問いました。
「………身の程知らずなのを承知に伺います。奥様と 一体何があったんですか」
使用人が、知る必要のないこと。
遊女の振る舞いとして、詮索などあり得ないこと。
奥様が あえて言わなかったこと。
すると坊ちゃんは、その目を大きく見開き私へと視線を向けました。
「……親父から何か聞いたのか」
「誤解から先に解かせていただきます。炎司様に買われて半年、私は奥様と坊ちゃんの部屋が真逆の位置にあることを疑問に持っていました。決して炎司様から何か言われたわけではありません」
真っ直ぐと、焦凍坊ちゃんへと視線を向けます。
「言いたくないなら、言わなくて構いません。私にお二人の間のことが解決できるほどの能力があるわけでもありません。ただ…………私は、冷様の苦しそうな姿も、焦凍坊ちゃんの辛そうなお顔も、見ていたくは無いのです」
すると坊ちゃんはその端整な顔に皺を寄せました。
「母さんの………」
しかし、それは私への怒りではなくーーーー
「…………俺は幼い頃、母さんに殺されそうになった」
時間をかけて、ぽつりぽつりと言葉を履き始めます。
「………」
「母さんが元娼婦だったのは知ってんだろ。それを親父が買ったのも………」
「存じています。私の姐様の、姐様だったと。美しく理知的で、素晴らしい女性ということも」
「けど、それを轟の家が許すわけもねえ。娼婦を正妻に迎えるなんて、バカのすることだって。それでも親父は無理やり母さんを正妻にした。そっからはわかんだろ。母さんは親戚中に金の為に親父を誑かした悪女だって罵られた」
「それは」
「ああ、母さんはそんな奴じゃ無い。親父が金の力を使って、母さんを無理に手籠めにしたんだ。それだけじゃねえ、親父は母さんに"轟の女なら耐えろ"って。母さんは心を病んで、それで………」
坊ちゃんの言葉が詰まる。





「………母さんには俺が親父に見えたらしい。ある時俺のこの赤い髪にこの緑の目を見て母さんは"何故買った"と俺を殴った。何度も………何度も」




/ 32ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp