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[R-18]娼婦の唄【轟 焦凍】【爆豪 勝己】

第4章 感謝を








「すずめ、奥様が呼んでいたわよ」
「え、奥様が?」
焦凍坊ちゃんの晩の膳を片すために、炊事場へと戻っている途中です。
奥様の世話係の先輩使用人が私に声をかけると、そう言って何かしたのと首を傾けました。
「いえ……悪いことは何もした覚えはありませんが………」
気付かないうちに、粗相でもしでかしたのでしょうか。
「坊ちゃんの膳はアタシが片しとくからさ、アンタは先に奥様んとこに行きな」
「は、はい、すいません!ありがとうございます」
軽くなった膳をその人はひょいと持ち、4つの膳をバランスよく持って私に背を向けます。
それにかっこいいなあと一瞬見惚れるものの、急いで奥様の所へ行かなければと、普段向かうのとは逆の方向へ体を向けました。









「お待たせ致しました奥様ーーー」
「待っていたわ。すずめ」
「え」
襖を開けるよりも前に、そう言われます。
それに驚き、私は思わず声を漏らしました。
すると、ゆっくりと襖が開かれます。
「廊下は寒いから早く入りなさい。それから、ゆっくりお話ししましょう」



月夜に照らされる、美しい銀髪。


それに茫然とします。
遠くからは何度も見たことがありますが、近くで見るとその天女の如き美しさに、心が奪われるようでした。
「ほら、早く」
「は、はい!」
慌てて中に入り、襖を閉めます。
幾ばくか暖かな室内。先に座っていた奥様の側には火鉢があり、こいこいとその手を揺らしました。
「座って」
そこには、座布団が敷かれていて、私は戸惑います。
「お、奥様、私は使用人です。座布団は不要で……」
「お茶菓子も持ってきてもらったの。丸中屋の栗饅頭!あ、甘いものよりもしょっぱいものの方が良かった?」
「いえ……その」
「ほら、早くこっちに来て。ずっとあなたとお話がしたいと思っていたの」
その儚い笑みに、私はそれ以上拒むことができませんでした。
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