第8章 魔王って聞くと音楽で習ったやつ思い出すよね…
静かな寝息が聞こえてくる。
「…まさか渉がそこまで嫉妬するとはなぁ…」
くくっ、と喉を鳴らしながら笑う魔王。
そんな魔王を少し睨む道化師。
「…まさか……渉、お前そいつのこと」
「さぁ?何のことでしょう?私と誉は仮にも兄妹です。それ以上でもそれ以下でも」
「本当か…?」
「っ!!!!」
そこで道化師は言葉をつまらせた。
そんな道化師を全てを見透かしたような真っ赤な眼で黙って見つめる魔王。
「……まぁ、俺様ちゃんにはかんけーない話したけどな」
魔王は腰を掛けてた花壇から立って道化師の腕の中で眠る白雪姫の頬を撫でる。
「なーんかコイツ見てっと消えそうで怖いんだよなぁ。さっき会ったばかりだけどよ。ネコみたいに…気がついたら何処かに行きそうで…」
少し名残惜しそうにしながら魔王は白雪姫から離れる。
「ちゃんと、見ててやれよ。そいつが迷子にならないように…」
「何か嫌な予感がするんだ」
魔王はそう言ってその場を去る。
「奇遇ですね……私もそう思います」
道化師が呟いた言葉は誰にも届くことなく風にかき消された。