第9章 Fated【青峰大輝】
警視庁警備部警護課に所属してた俺は、主に要人の警護を担当してた。
いわゆるSPってやつ
警察に入って、交番勤務をした後、捜査一課に配属されて3年。
希望してねぇし、俺は捜一にいたかったのに勝手に警護課に異動になった。
警護課なんてなりてぇ奴がゴロゴロしてんのに、なんで俺なのか分からなくて上司に残留を申し出た。
「警護課行くのって強制すか?」
「当たり前だ、内示じゃなくて辞令になってるだろ。撤回なんてない」
俺の持つさっき所長に渡された紙を指さして、仏頂面のまま望まない答えが返された。
普段からにこやかって訳じゃねぇけど、こういう仏頂面をしてる時、どちらかといえば不機嫌だった。
不機嫌になりてーのはこっちだ。
まだ片付いてねぇ事件だってあんのに、今日が15日で、来月1日には警護課に着任しろって。
こんなでたらめな辞令今までに出たことなんかねぇはずだ。
人事と上層部から所長に話がいって、そっから課長、次に本人に内示があって、正式辞令が出る。
だから内示から移動までは大体3か月はある。
それなのに、内示はなしで、着任まで2週間。公務員のくせしてクソブラックじゃねぇか。
「捜一残りてぇんだけど。そもそも希望してねぇし」
「言葉遣い。何度も言ってるだろ。百歩譲って俺にはいいけど、警護課で上司にタメ口なんて聞いたら、お前干されるぞ」
「なら捜一でもっかい引き受けてくれよ。初日にタメ口でつき返されればそれで万事解決だろ」
仕事中なら上司にタメ口なんてしねぇけど、今は署で仕事をしてる最中の夕飯休憩。
昼に辞令を渡されて、納得できねぇって言ったら話をする時間を取ってくれた。
交番勤務から2年でいきなり捜一には入れたのはこの上司のおかげ。