第3章 暗殺者の訪問
背筋が、凍りつくのを感じ今すぐ逃げたい気分になる。
ヒソカの殺意と興奮が入り混じった目で、見つめられたせいか固まってしまう。
ヒソカの手に力がこもり、ルナの細い指先をペロっと舐め始める。
「ちょ、ちょっとやめて…こんな所で…」
ヒソカから強引に手を離すと、少し指先が震えていた。
この男は危険な男!だけど…ヒソカのことは、嫌いじゃないし好きか嫌いかで答えるなら、『好き』なんだと思う。
ルナの肩をポンッと軽く叩いて、耳元で囁く。
「気をつけてね☆ルナは、誰よりも綺麗だから…」
スッーとヒソカは、何も無かったように立ち上がる。
二人の男に、しかも同じセリフを言われたのは、初めてで顔が熱くなる。
「ルナ!どうしたの?行くよ」
ボーっとしていると、手を差し伸べてきてくれる姿は、優しい時のヒソカだ。
「クロロもヒソカもバカ…身が持たないよ」と小さく呟くと、ヒソカが、『何か言った?』とニヤニヤしながら顔を覗いてくる。
「なんでもないよ!ごちそう様。
そう言えば言い忘れたけど、ヒソカって意外と焼きもちやきなのね。
意外に子供っぽいとこもあるから以外!」
意地悪っぽく笑っていると、ヒソカは、『そうだよ』と言いながら、少し不貞腐れた顔で抱き寄せた。
「クスクス、可愛い」
「冗談でもやめてよ、僕は女の子じゃない。
イルミにでも言ってあげたら、彼なら喜ぶんじゃないかな。
無表情だけど、あれはあれで綺麗な顔しているからね。
女性の格好させたら、綺麗だったよ」
ん?女性の格好って?
任務でかな?すごく似合いそう、映画で出てきそうなスパイ女!いい!
「ヒソカって、見たことあるの?」
ニヤっとした顔は、奇術師のごとく妖艶に笑う。
子供なのか大人なのかわからない表情で、ドキっとしてしまう。
「やっぱり聞かない」
頬をプクっと膨らみながら空を見上げて、思い出したようにヒソカに訪ねてみる。
「ねぇ、ヒソカお願いあるんだけど?」
「何だい?」
「ここの市場ってすごい賑わいなんだって。
ちょっと散歩しようっか?」
手を伸ばして、明るくなった太陽の下を、変わり者の奇術師と手を繋ぎ歩きだした。