第2章 僕の隣
あれから1週間経った。
僕と彼女の関係性は相変わらずだった。
僕はあんな話を聞いて尚、いや、聞いたからこそ彼女が一層愛しかった。
彼女が手に入らないと気づいたからかもしれない。
彼女自身の話を初めて聞けたからかもしれない。
彼女の意外な面を見てしまったからかもしれない。
とにかく、僕は益々彼女が好きになっていた。
「あれから会ったの、あの彼と。」
世間話の合間にさり気なく尋ねてみた。
僕の気持ちに気づいているであろう彼女はため息をついてから言った。
「会ってないわよ。もう諦めた。」
諦めたというのが本当かはわからない。
強がっているだけかもしれない。
それでも僕はなんだか嬉しかった。
僕にも希望があるんじゃないかという気がして。
もしかしたら僕と、付き合ってくれるんじゃないかと思って。
グラスの中の氷がカランと音を立てた。
踏み込んでしまえば、今と同じ関係には戻れない。
こうして他愛ない話をすることも無くなるかもしれない。
でも、彼女ともっと話したい。
彼女に触れたい。
彼女の特別になりたい。
僕は決心した。
フラれたらそれきり。
でも、こんな気持ちでいつかは会わなくなるなんて、できない。
彼女の、隣にいたい。