第3章 蛇喰夢子という女
「えっ……?」
『借金があったの……、早乙女さんに500万円。ギャンブルで返そうとしてまた借金が増えて……。沼を泳いでいる気分だった。もう疲れた……。私が貴方くらい強かったらもっと違かったんだろうね……』
返すあても無い、先の見えない真っ暗な人生を早乙女さんに生かされてただ泳がされていた。
私はもう、その沼で泳ぎ生きる事に疲れてしまった。
私にギャンブルは向かない……、
それに、イカサマに加担して転校初日の蛇喰さんを早乙女の命令に従って陥れようとしていた。
その事実にも私は耐えられなかった。
『蛇喰さん、本当にごめんなさい……っ!』
「あ……、」
深く、頭を下げる。
私がミケで、早乙女さんの命令に従うしかなかったとしても……、私がした事は人間的に許される事じゃない……。
私が今蛇喰さんにできる事なんて謝る事くらいしかないけど……、
『……っ⁈』
「そういえば、お礼がまだでしたね。どうぞ、」
『えっ……、いや、ちょっ……!』
「今日は楽しいギャンブルができました!これはほんの気持ち程度ですが、受け取ってください……」
夢子はそう言って身体を押し付け、涼子の手に500万円の札束を握らせる。
ちょっ……⁈蛇喰さん顔が近っ……、近いっ!///
というか胸がっ……!!
『じゃ、蛇喰さん近っ、近いです……ッ!/// というか、私はイカサマに加担して貴方を……ッ』
夢子は涼子の唇にそのすらっとした細くて長い綺麗な指をそっと当てる。
「私は"絶対に勝つ勝負"も"絶対に負ける勝負"も嫌いなんです。それはギャンブルではありませんから……。今日刺激的なギャンブルができたのは、鈴井さんのお陰です……、ありがとうございました!」
その笑顔は一点の曇りもなく見えた。
私への恨みも憐憫も一切ない……。
心底、今日のギャンブルが楽しかった……、だからお礼を言う。
それだけだ。
彼女はまともじゃない……!
ギャンブル狂 ────、
"賭ケグルイ"だ。