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The one that got away.

第7章 恋人(仮)作戦その2





『長い』

「……」

『それに爆豪君はじっとしてくれていれば良かったの、別に舌まで入れなくても……なに?』

「…別に」


爆豪から離れ大きく息を吸い込んだ凛は一呼吸置いた後、顔を赤く染めながら言った

普段の冷めた態度は変わらないが早口で多少焦っているように話す凛に爆豪は少し胸が締め付けられた。

先程の妖艶さとは程遠いまるで女子高生のような反応だ。これはもしや?と思ったが本人には言わない


『爆豪君は…慣れてるの?』 

「あ?」

『高校の時からモテてたよね、今まで沢山居たんでしょ?』


『そういう人たち』と凛は話しながら部屋の奥へと行き、机のうえに置かれていた1つのパソコンに懐から取り出したUSBメモリーを差し込んだ。そして慣れ親しんだような手つきで次々とタイピングをしていく


「テメェはどうなんだよ」

『……私?』

「居たんかそーいう奴ら。それとも…」


爆豪は凛の隣で画面を覗き込みながら彼からは想像できないほど弱々しい声で吐いた。すると、凛は思った以上に至近距離に居た爆豪の顔を見た


『ピーターは違う。そういう関係じゃない』

「じゃあ何なんだ」

『…理解者、かな』


手の動きを1度止め、凛は懐かしむように腕に着けているブレスレットを見て目を細めた


『こんな私を…何の取り柄もない私に居場所をくれたの。それに私のこと兄妹だって、面白いでしょ?』

「…」

『今回は爆豪君に変に絡んでるけど本当はすごくいい人なの。許して上げて』


お願い。という凛はまるでピーターという人物を全て理解しているとでも言いたげである。だが爆豪はそうは思わなかった

幼い頃以来にこんなにもまともな会話をしているが、彼女が自分を低評価しすぎるところは何ら代わりない。

そして相手の気持ちに疎いところも

同じ男の爆豪が言うのだ。あのピーターという男が凛に向けるものは確かに愛情である。だがそれは家族愛なんかではない


「よく話すじゃねえか、今まで黙りだった癖に」

『…まあね。ほら、できたよ』


素早くUSBをパソコンから抜き取り凛は扉へと向かった。そして扉を開けるときに誰にも聞こえないような声で吐いた


『最後くらいは…ね』


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