第2章 運命の歯車 《信長様編》
そんな茉莉花をチラッと見ながらも、信長は話を続けた。
『よく、武家の息子達に虐められてた女子がおったのだ。
俺は、幼き頃より自分よりも弱いものを虐め、蔑む事に我慢ならなかった。
その時も、いつもの事の様に武家の息子たちを撃退しただけなのだが、その日から其奴は、俺を見つけると名前を教えろと五月蝿く付いて回ってきた。
名を言わずにいると泣きながら着物を掴んで離さなかった。
あまりのしつこさに仕方が無く、吉法師だと教えると、泣きながらニッコリと笑っていたな。
その後も何かといつも後ろについてまわり自分も強くなりたいと泣きながら、言っていた。
だが、父が亡くなりそれまでの様な勝手が出来なくなり、次第にその辺からは足が遠のいた。
俺も、天下布武と言う目的のため、政やら何やらでその頃の記憶など忙殺されていたからな。
そうして今、天下布武を成し遂げこの、日の本をまとめ上げた。
しかし、今からまだ、やらなければならぬ事が山の様にあるのだが、秀吉の世話焼き心が疼きだしたんだろう。
いつまでも、正室を取らぬ事に痺れを切らして、此度の話になったのであろう。』