第1章 私のこころの行方
『此度の見合い、さぞ驚いた事でしょう。
でも、父上も私も、貴方の幸せを願って今回の縁談を進めたのです。』
『私の幸せ、、、?』
『ええ、、、
貴方は私達の娘。
誰がなんと言おうと大切な娘なの貴方は、覚えているかどうかわからないけれども、まだ、齢4つか5つ程の頃、父上と共に遠出に出かけた先の、本能寺の境内で貴方は一人で泣いていたのです。
村人の子供には見えず、また、武士の子供にも見えなかった。
その時の貴方の様子は、とても戸惑っていました。
でも、泣いて居る貴方の前に来た、私達を見て貴方は満面の笑みを浮かべたのです。
それはまるで私達の子供に成るべくして目の前に現れたような、そんな気がしました。
でも、少し気がかりだったのは、貴方の着物や、言葉が私達と違った事だったの。
でも、どうしても私は貴方を娘として育てたいと思い、父上を説得したの。
本能寺の住職に尋ねても一度も見かけた事がないと、、、、
身寄りがなければ尚更、、、
私は、子供を授かれぬ体ゆえ、父上も貴方を娘にと望んだのです。』
『そんな事が、、、、
申し訳ありません母上。
私はあまり、その頃の事は覚えていないのです。
それだけ、母上と父上に愛されて今日まで育てていただいたからなのでしょう。』