第1章 私のこころの行方
そして、茉莉花が次に春日山城に来た時は、信玄に戦術などの勉学を、景家には文学を、紫乃には華道と茶道も教えて貰う約束になってしまい、次の滞在も長くなる事は間違いなかった。
じつは、これは茉莉花をより長く謙信の側にとどめ置きたいがための、景家の発案なのである。
信玄は、二つ返事で了承し、紫乃も喜んでこの作戦に加勢したのである。
そうして、再び春日山城に来たのは一度帰ってから一月後だったが、案の定、この度は六月間の滞在となった。
前回帰る時の約束通り、信玄には戦術を、景家には文学を、紫乃には華道茶道をと瞬く間に時間は過ぎ謙信も、春日山城に茉莉花がいるだけで城内が華やかで賑やかになっている事が不思議と自然な事に感じていた。
もちろん城内の家臣や女中も、皆茉莉花が好きなのであろう、常に誰かが茉莉花の周りにいてあれやこれやと世話を焼いたり、茉莉花の話を聞きに来たり、と、とても敵方の武士の娘だからとか敵対心を持って接するものは一人としていなかった。
茉莉花には不思議な魅力があるようだ。