第1章 私のこころの行方
そのうち、この姫鶴を作らせた刀鍛冶にお前の刀を作らせる。
楽しみにしていろ。
と、謙信は一人嬉しそうに独りごちた。
それを見ていた、景家は、やはり謙信の心の中では、茉莉花への気持ちがとても強く現れている、、、、
ご自身は自覚はされていないのかもしれないが、、、、
いや、、、お分かりのはずだ、、、、と確信した。
そうして、これからの事を考え一人ニヤニヤしていた。
それは、その場にいた全員がそれぞれ同じ事を思ったり考えていたのは、言うまでもない。
そうして、あっという間に三月も経ちいよいよ、来週には安土城下の両親の待つ家に帰らなければならなかった。
ただ、此度の春日山城への滞在はあくまでも剣術の稽古だと、初めから三月と期限を決めて両親を説得したので、景家や紫乃を始め信玄なども、まだ滞在を引伸ばせと言ってきたが、両親との約束事、そこはきちんと守るべき事なので、丁寧に断り、また、伺いたいと素直な気持ちを伝えた。
すると、景家も紫乃も、いつまた春日山城に来ても良いように部屋も着物なども全てそのままにしておくと言ってくれた事に、嬉しさのあまり茉莉花は、大きな瞳から涙が溢れた。
それを見た紫乃も涙を流し、茉莉花とのしばしの別れを惜しんだ。