第1章 私のこころの行方
そう言いながら、謙信は、茉莉花の気持ちが嬉しくもあり、明日の夕餉が待ち遠しいと思うのであった。
物心着いた時から、食事が楽しみだと思うことなどないが茉莉花が自分の為に作るというのならば、それは別なのだ。
何故こんなに、茉莉花の行動一つ一つに心を動かされるのか、謙信はまだ、自分の気持ちに気付いていないのだ。
『はい。
ありがとうございます。
謙信様に褒めていただけるように、一生懸命作らせていただきます。』
と、本当に嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔に謙信は、顔が少し赤らんでしまったが、気づかれぬように顔を逸らし先に歩いて行ってしまった。
ふと、謙信が立ち止まり、まだ、茉莉花と離れ難い気持ちがフツフツと湧き上がり
『ならば茉莉花、今宵はもう少し酒が飲みたい付き合え‼️』
『はい。』
と、二人は謙信の部屋の前の縁台で、ゆっくりと、酒を楽しんだ。