第1章 私のこころの行方
その場の雰囲気が少し、変わったところでまた、賑やかな宴会が始まったのだが、昨日の夕餉の時に茉莉花への挨拶がまだ出来ていない家臣達は、今日こそは、と、頃合いを見計らっていたが、謙信が茉莉花を離さないのだ。
茉莉花のそばに寄ろうものならば、切られるのではないかと、ヒヤヒヤしながら様子を伺って居る。
その時、謙信が再び政の話を景家と始めた。
それを見計らったかの如く、一人の家臣が茉莉花に挨拶に来たのを皮切りに、雪崩のごとく茉莉花を近くで見たいと、我先に駆けつけた。
その様子を謙信は、気づかぬ振りだが、しっかりと確認していた。
茉莉花は茉莉花で、胸中では謙信の家臣の方々、失礼があってはいけない、私は出来るだけ皆さんに悪い印象を与えない様にしなければと考えていた。
それは、勿論謙信の客人として春日山城に滞在する上で謙信や、信玄に迷惑はかけられないと考えた上での事で、一人一人に丁寧に挨拶をしていた。