第1章 私のこころの行方
と、謙信に大きな瞳を滲ませながら微笑んだ。
謙信はその笑顔を少し辛そうな感じで眉を潜めて見つめた。
『お前は、何故そんな顔をする❓』
そう、独り言の様に呟き、つっと茉莉花の頬に掌をそっと添わせる。
それを、この広間にいた皆が全員固唾を飲んでただ見ている。
其々の心の中では、思う所が様々であろう。
あの戦狂いで、女嫌いの謙信が、さも愛おしげに女の頬に手を充てて、尚且つ優しくいたわっているなんて、、、
『え❓』
茉莉花は自分の頬に手を添える謙信に驚いたが
『そんな顔、、、ですか?』
『ああ、、、。
泣きそうな顔だ。
お前のそんな顔は見たくない。』
『申し訳ありません。
皆様のお心遣いが、とても有り難く感じ胸が一杯になってしまったのです。
もし、涙が流れたのであれば、私の心の中で感動が溢れてしまったという事です。
決して悲しい訳では無いのです。
でも、謙信様のお気持ちを損ねてしまったのならば、申し訳ありませんでした。』
『いや、損ねた訳では無い。
ただ俺はお前の悲しそうな顔や涙は、見たくないのだ。
お前はいつも笑っていろ‼️
何時も、そうだったではないか。
俺はお前が笑っていないと、落ち着かぬのだ。』