第1章 私のこころの行方
見合の刻限が近づき
信長は、先刻から自分の中で想像をしていた娘がどれ程の器量なのか、、、、
はたまた、どんなに男を手玉に取るのが上手い悪女なのかと、様々な妄想をしていたがそこに現れたのは、何処にでも居るような
娘、、、。
たしかに器量は良いが、信長からすれば特に興味をそそられる風貌ではなかった。
それは、そうだろう、、、
信長の元には、毎日、日の本のありとあらゆる国の大名から、
『自分の娘との見合いを』。
と数え切れないほどの、話がある。
そのなかには、日の本一の美しさを持つと言われる大名の娘もいるのだ。
だが信長は、今まで全くと言っていいほど国の大きさや強さ、ましてや、女子の器量などで正室を考えた事は無い。
それどころか、正室など当の信長の頭の中にはこれっぽっちも考えてもいなかった事。
今の信長からすると、この日の本を自分の手で纏め上げ、天下布武を成し遂げた今となっては、信長に逆らう大名などいるはずも無い。
だが、日の本を統一した、天下人の信長がいつまでも独り身でいる事は体裁上まずいと、秀吉が無理やり、この見合いの話を持ってきた時は、信長は全く興味も気持ちも無く、秀吉が言うような体裁などどうでもいい事だと、特に正室を設けようなどとは全く考えていなかった。
だが、謙信が何を置いても手に入れたい娘だと光秀からの話を受けて少なからず興味を持っていた信長は一気に興ざめしてしまった。
秀吉に目で合図をし、帰る口実を述べさせようとした、その時、その娘の口から信長が予期せぬ言葉が飛び出した。