第1章 私のこころの行方
いつもなら見合いなど断る信長だが、
此度ばかりは、否応無く
見合い相手と会わざるを得ない状況になってしまい、しぶしぶ信長は見合の席となる場所へ秀吉を伴い出向いていた。
しかし、本当に気乗りのしない見合いだったため、すこぶる機嫌が悪い。
秀吉も、自分でこの機を設けたのだが、気まずくて、信長の顔色を伺いながら静かに後ろに控えて居る。
だが、そこに突然光秀が現れ、今日の見合い相手は、実は、越後の龍と呼ばれる上杉謙信が、一刻も離さず側におき、兎に角、何から何まで世話を焼いているらしい娘である事。
《それに、、、、、、実は、、、、》
(と、、、何やら小さな声で、、、なにかを告げていた)
それは、あの戦狂いの謙信が心から惚れ抜いてしまった娘である事が信長に伝えられた。
それを聞いた信長は、あの女嫌いの上杉謙信がそこまで惚れ抜いているとは、、、
信長は、形の良い薄い唇の端を僅かにあげ、
『興味をそそられる、、、。』
と、一言。
今までの機嫌の悪さは何処へやら。逆に面白いと思い、早くその娘に会ってみたいと興味を持っていた。