第8章 狙われた彼女
「愛様、朝で御座います。」
「愛様?……失礼致します!」
一応断りを入れて部屋の扉を開ける睦月の瞳には、主のいなくなった荒れた部屋だけが存在した。
サッと顔色を変えて踵を返しては険しい表情で幸紀の部屋へ向かった。
「幸紀様!」
「!うわっ……む、睦月さん……珍しいね、ノックしないなんて……」
「幸紀様、透様、心してお聞き下さいませ。」
睦月から伝えられた事態に幸紀も安室も息を呑んだ。
「愛さんが拐われた!?」
既に起きていた小五郎達に昨日いた部屋まで来てもらい、今朝起きた事態を伝える。
「ねぇ、睦月さん。愛お姉さんの部屋は荒れてたんでしょ?」
「……はい。いつもなら早起きな愛様が来られない事に違和感を感じまして、失礼とは思いましたが開けさせて頂きました。」
「……荒れてたなら争ったんだよね?何で誰も気付かなかったのかな?」
「?!」
コナンの言葉でハッと何かに気付いた幸紀は慌てて愛の部屋に入る。
その後を安室達も追った。
幸紀が机の引き出しなどを開けて何かを探している。
クローゼットの中にあったダイヤル式の鍵が付いた箱を見つけて、ダイヤルを合わせて開ける。
「……おかしい……!」
「何がおかしいんです?」
「愛はあの後、この部屋に戻ってきてない……」
「幸紀さん、何で戻ってないと?」
「……毛利さん……愛にはある習慣があるんです。」
幸紀が言うには、両親が死んだ日から愛は父親から受け渡されたモノを寝る前に必ず箱に仕舞って保管するらしい。
「受け渡されたモノとは?」
「その箱、やけに厳重だよね?誰かに盗まれたくないって事?」
「……指輪……か。」
小五郎とコナンが幸紀に問い掛けてる傍でボソッと安室が呟く。
昨日、愛が着けていた指輪を思い出した2人は幸紀を見る。
「……透の言う通り、指輪だよ。」
「……という事は……愛お姉さんが着けていたのが本物?」
「まさか……それを狙って愛さんを拐ったのか?!」
「……それは無いと思います。俺が着けている指輪は、本物に限りなく近く……偽物かどうか本家の人間でしか分からない位に細かい所まで作ってあります。」
「……じゃあ、何で……?」
ー狙いは愛本人。