第1章 終わりと始まり
「ちょっと南、わたしの抱擁の邪魔しないでくれる?
穂乃香ちゃんはわたしとハグしようとしてたの」
「ダーメです。
先輩を抱きしめて良いのは俺だけですから。
例え吉井先輩でも怒りますよ?」
「それはわたしのセリフだってば!」
「ったく、そーゆーのは彼氏になってから言えよな!
でもまぁ...辛かったな、よく耐えたな。
やけ酒ぐらいいくらでも付き合うからな?
遠慮すんなよ」
ワシャワシャと頭を撫でてくれる北見さん。
その行為に慣れていないのか、力加減が調節出来てなくて少し痛い。
「さっ、時間ももうあんまりないし早くご飯食べに行こっか。
穂乃香ちゃん何食べたい?」
職場でのハグに恥ずかしくなって必死に腕から抜け出そうとしているものの、南くんはビクともしない。
「先輩、ラーメン行きましょ!」
「いや、ここは肉だろ、織田」
「えー、パスタでしょう?
ね?穂乃香ちゃん」
今までと全く変わらない皆に、胸が熱くなる。
「ふふ、皆バラバラ。
そんなにバラエティーにとんだ店、ないわよ」
温かい雰囲気に、自然と笑みが零れていた。
「良かった...先輩、やっと笑った」
「え?」
「ずっと笑ってなかったから心配だったんですよ?」
ムニムニと頬を引っ張ったり、押したりしている。
「ごめん。
私やっぱりこの職場が好きです」
「おう、俺もだ」
「わたしもよ」
「私もな」
部長まで...。
「俺は、先輩が好きですよ」
「「みなみー!」」