第1章 終わりと始まり
結婚式を来月に控えた今日。
交際5年目、同棲を始めてから2年目を迎える。
私と彼は同じ職場。
部署は違ったけれど、互いに時間を作って、コミュニケーションも不足していない。
そう、思っていた。
ついさっきまでは。
体調があまり良くなくて、午前中だけで仕事を上がらせて貰った。
部長が優しい人で本当に良かったと感謝した。
彼と同棲している家に帰り、鍵を差し込むと、なぜか開いていた。
今日は私も彼も仕事で、家には誰も居ない筈。
朝はちゃんと鍵を掛けたし...もしかして泥棒!?
足音を忍ばせて部屋に入って行く。
玄関には彼の靴と、知らない女性の靴。
赤いハイヒール。
「んっ...あっ...あん...」
え......何、この声...。
「好き...在人...あるとっ...」
在人...私の婚約者の名前。
「俺も好きだ...っ、もうイキそ」
「良いよ...あたしのナカにたっぷり出してぇ」
聞こえて来る声に、状況が整理出来ない。
何...どういうこと。
頭が混乱しながら、寝室のドアを開けた。
「な、に......してるの...」
「おまっ、なんで、いや、違うんだ、誤解だ!」
ベッドで抱き合う裸の男女。
女の蜜口からは彼がさっき吐き出したばかりであろう白濁の液が垂れていた。
「違うって、何が違うのよ」
声が、身体が震える。
理解出来ない、したくない。
「やっだぁ、穂乃香ったらこんなところ見てもまだ分からないの?」
クスクスと、蜜口に残る精液をティッシュで拭きながら笑う。
「ヒメ...あなた、自分が何をしたのか分かってるの?」
彼女の名はヒメ。
彼と同じ部署で働く、私の同期。
ちなみに彼は私より3つ歳上。
「穂乃香こそ、彼女だからって勝手に在人の部屋に上がり込むなんて、非常識よ。
常識のない女は嫌われるわ」
ねぇ、在人?と上目遣いで婚約者を見上げる。