第3章 3部(裏有)
晴れた日のカミナシティの公園。
(…いい天気)
多忙の中、唐突に出来た休日に、私は散歩に来た公園でカミナ像を見上げていた。
数年前、皆で作り上げた公園が完成して、その後シモンが作ったカミナ像が中央にあるこの公園は、今では街の人々の憩いの場になっていた。
私もこうして休日にふらりと足を向ける程。
――あの悲劇と革命から七年が経った。
大グレン団のリーダー・カミナが死んでしまってから、もうすぐ七年になる。
前を向けず息も出来ず、一歩も動けなかった私が居た七年前。
その一年後、まさかのカミナとの再会で、漸く動き出せた六年前。
平和な街に飽いたとカミナが旅に出て、一度は帰って来たのが四年前。
その時はまた帰って来ると言ったけれど、それきりカミナは現れない。
「…カミナ」
時々こうして彼の名を呟く。
その名前の彼は、目の前の巨像と同じくらいの存在感をしていた。
我ながら感じる。もう自分の声音に悲壮感が混じる事は無かった。
カミナが再び去って四年経つ。
けれどもその月日は、自分が思っている以上に長かったようで、忙しく毎日を過ごしているうちに長い夜に『彼』を想って泣く事が減った。
だからと言って『彼』への想いを無くした訳では無い。
ふと気付く。これが『時間が経てば癒える』ということか。
それでもやはり想いは変わらない。
(…カミナは元気かなあ)
幽霊に元気かと問うのは不思議な気がするが、一日の終わりに家に帰ると、不意にその家の広さに気付く。
この家にカミナと一緒に居たのは六年前の数日間、そして四年前の一晩だけ。
それだけなのに、不意にカミナが居る気がする。
何年経っても一人に慣れる事がない。
(カミナは今どこに居るんだろう。何をしているんだろう)
消えてしまった、という事は無いと信じている。カミナは必ず約束は守る。
もう一度会いに来てくれる。必ず。
(ねえカミナ)
よく晴れた空を見上げると、あの空のような彼を思い出す。
(会いたいよ、カミナ)
私の七年の想いは変わらず、積もったままだ。