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Invisible world【グレンラガン】

第2章 2部


「そうなのかもしれねェし、違うのかもしれねェ。ただ言えるのは、今のお前にはやるべき事があるってだけだ」
「…やるべき事」
「そうだ。やれよ。お前もシモン同様俺の兄弟だ。お前の信じる道を行けよ」
「私の信じる道…」
「それがきっと正しい道なんだよ」

目の前が明るくなった気がした。同時に視界がぼやけた。
(…カミナは、いつも私の道を指し示してくれる)
それはカミナと出会う前から彼がしてくれていた事。
熱く涙に濡れる私の頬をカミナが撫でた。
「お前にもフられちまったし、俺はちょっくらまた旅に出てくる。だからなあ、泣くな」
困ったように私の頬をごしごしと擦るカミナに笑って、少し涙が止まった。
「また会いに来らァ」
「…本当?」
「ああ。カミナ様は嘘なんざつかねえ」
胸を張る彼にまた笑って、嬉しくなる。

(ああ、私はやっぱり)
カミナが好きだ。

泣き止んだ私に安心したのか、カミナが目を逸らし頬を掻いた。
「なあ、約束覚えてるか?」
「約束?」
「ああ」
何だっけ? と首を傾げた私にカミナが向き直る。
「これの意味だ」
「…カミ…」
名を呼びかけた私の言葉が途中で止まった。
その名を呼ぼうとした人の。カミナの唇で塞がれた、私の唇。
二年前、カミナシティ中央公園が完成したあの日。カミナを見送った公園でされた、あの時と同じ口付け。
あの時と同じように一瞬で、永遠だった。

すぐに離れ、また目を逸らして頬を掻くカミナは、ほんの少し耳が赤い気がした。
「カミナ、私…」
「…次に会った時でいい。じゃあな、」
前回と同じ言葉をその笑顔に残し、カミナは手を上げた。

――唐突に現れ、唐突にカミナは去ってしまった。私はまだカミナの体温の名残を感じる唇を押さえた。
「…カミナ」
彼の名を呼ぶと、ただただ愛おしさがこみ上げる。
「カミナ…!」

次会う時こそ、私はこの気持ちを伝えようと思う。また会うって約束したから。その時こそこの迸る溢れる気持ちを、彼に。
「また、会えるよね。…カミナ」


私はこの時カミナに付いて行かなかった事を、やはり少しだけ後悔した。
カミナが次に帰って来たのはこの時の、さらに四年後になる。その時シモンは21歳、私はそのほんの少し下になっていた。
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