第3章 3部(裏有)
「!」
「…?」
公園のカミナ像の前で些か放心していたらしい。
ふと呼ばれてまわりを見回すと、シモンが遠くから手を振りつつ歩いて来た。
「やあ、久しぶりだね。先生」
「ちょっと止めてよ!」
笑顔のシモンに対し、慣れない敬称で呼ばれ私は眉を顰めた。
私は四年前、カミナがカミナシティを去る時、一緒に行くのを断った原因の歴史の教本を作りながら、ギンブレーの勧めで大グレン団の冒険譚を書いてみた。
「さん、これは面白いですよ! シモンさんや皆さんに見せてもよろしいですか?」
それは唯一の読者の予定だったギンブレーに賞賛され、複写されシモンにも届けられ、あれよあれよという間に印刷物となりカミナシティに広まった。
一介の大グレン団ファンの書く冒険譚が受けたのは少し不思議だが、嬉しいのも確かだ。
だがそれ以来、一部の人に先生などと呼ばれ辟易している。
慌しかった教科書作りも無事に終わり、監修に私の名が載ったせいで、時折学校に講師としても招かれるようになった事も関係しているのかもしれない。
その敬称の話は当然シモンにも伝わっており、会うたびこうしてからかわれる。
「シモン総司令は元気ないね」
「まあね」
シモンにもあえて役職を付けからかい返すが、シモンはその甲斐なく肩を竦めるだけだ。心なしか眉を顰めている。
元気の無い理由を聞いても「かっこ悪いから」と唇を尖らせ教えてくれなかった。
あとでこっそりキヨウに教えて貰ったのだが、あの時シモンはニアにプロポーズを断られていたらしい。
理由は「二人は同じ人間にはなれないんじゃないかなあって」らしい。
よく分からないがニアらしいと笑い転げた。