第1章 1部
長い一日だった。
漸くカミナのお墓参りに行けたと思ったら、そのカミナの幽霊に会って。
今は何故か、隣に居る。
目まぐるしい展開に眩暈がするが、疲労は感じない。
(…だって目の前に居るんだよ)
こっそりと恋をしていた相手が、今。
「なんだ、どうした?」
気付いたらじっと見つめてしまっていたらしい。カミナがこちらを見る。
「な、なんでもないっ」
慌てて目を逸らした。変な奴、とカミナが笑う。…ちょっとこれは心臓に悪いかもしれない。
「ところで、お前の家ってなんか色々すげェよな」
挙動不審になってしまう私を脇目に、カミナが周りをきょろきょろと見ている。
コンロに驚いていたカミナだったが、家の作りも気になるのか見回していちいち感嘆していた。
「そうかな。でも自分達で作ったんだよ」
「へえ!」
テッペリンが陥落した後は、その跡地に町を作ろうと皆で決めた。
ガンメンを使い土木整備をして、簡素な作りではあるが家を建てた。
その頃には近隣から次々と人が集まり始め作業人数も増えていた。
「今は公園作ってるけど、その前は私も家作りに参加してたんだよ。ここはそのうちの一つ。一人暮らしだから小さいけど」
「へェ、器用なモンだな」
感心したようにカミナは土で出来た壁を眺めている。
「ほら、この水道もリーロンが整備してくれたんだ」
「すいどう? なんだそりゃ」
「水源から水を引いて、この蛇口から出て来るようにしたの」
「あァ? …うおっ冷てェ! こりゃすげえモンが出来たな」
「お陰で家でお風呂にも入れるんだよ」
水道は既にダイグレンにあった。それをそれぞれの家で使えるようにして、水だけでなくお湯も出せるようにしたのはリーロンの力だ。やっぱりリーロンは凄い。
「風呂!?」
私の言ったお風呂という単語に、カミナの顔がぱあっと輝く。
「カミナはお風呂って知ってるの?」
「おう! 以前温泉ガンメンと戦った事もあるぜ! そうか風呂か、ありゃ良いモンだよな」
何故かニコニコと笑顔のカミナに若干の不安を覚えつつ、聞いてみる事にする。
「良かったら入る?」
「いいのか!?」
カミナの顔がこれ以上無い位に輝く。よっぽど風呂が好きなのだろうか。
「温泉じゃないけど。用意するね」
うんうんと頷くカミナ。幽霊もお風呂に入れるのだろうか。
(…ご飯も食べるし寝るみたいだし、こんな幽霊ならお風呂くらい入るか)