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Invisible world【グレンラガン】

第1章 1部



「…」
「…な…に」
声が詰まる。
「あー…その、なんだ。…泣くな」
「…!」
頭にぽんと手が置かれる。涙声はしっかりばれていた。

「俺はこんな存在だし、いつどうなるか俺自身にもさっぱり分からねェ。だがな、」
頭上の大きな手がわしわしと掻き回された。
「どうもこの世界で、俺が見えて俺の声が届くのはお前だけらしい」
「…今の所、ね」
鼻をぐすぐすと啜り嫌味とも取れる事を言う私に、はははとカミナが笑う。
「まあそう言うなって。だから約束する」
「…何を」
「お前に黙って居なくなったりしない。何があってもここに帰って来る」
「…!!」

思わず見上げると、真剣な目をして口角を上げたカミナ。今まで頭を撫でていた手をそっと私の頬に添えた。
「せっかくこうやって戻って来たんだ。俺は俺の居ない世界を見てみてェ。それで俺が出来る事が何か有るのか探す」
「……うん」
漸く絞り出した私の声は、もうはっきり涙声だった。
カミナの手が暖かくて優しくて、嬉しい。

「…じゃあ、お願いがあるの」
「おう、なんだ」
頬に当てられた手の感触と体温を感じながら、目を合わせた。
「この町を一緒に見て回ろう。カミナが遺した大グレン団が…皆が作ってるこの町を見て。…そして皆の今を見て」
「ああ、良いぜ」
カミナが屈託無く破顔した。


――その思い付きは最初から考えていた。
カミナを連れて行けばきっと誰かがカミナが見える、そうに違いないと思っていた。
同時にカミナが言ってくれた事がとても誇らしくなる。
カミナが帰る場所がここなのだと。
ここを選んでくれたのだと。

(…ごめんねカミナ)
カミナの高めの体温の指先に触れながら、私はカミナに謝る。
(私は欲張りです)

そこに居てくれる、それだけで嬉しい筈なのに。
(私だけがカミナを見ていられる)
誰も見えていないカミナを見る事が出来る私という事。
それはどうしようもなく私を甘い気分にさせる。

カミナが戻って来てくれて塞がれた胸の穴。
次は何時そこに暖かい風をくれるのかと期待してしまっている事に、今更ながら気付いてしまったから。
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