第1章 1部
幽霊かもしれない彼は旅立った。
彼が見えなくなるまで手を振り、そのままその場所にぺたりと座り込む。
頬が熱い。
ひたすら拭った筈の涙は、ちっとも拭いきれずに私の頬を伝う。
膝を抱え嗚咽を漏らす。我慢していたつもりは無かったが、一度出た声はなかなか止まらなかった。
カミナがしてくれた口付けがとても嬉しくて。
瞬間的に感じたカミナの体温が、今までで一番近かった。
カミナは「また帰って来る」と言った。
多分嘘じゃない。次に会った時に胸を張って自分の気持ちを伝えられるように、私は精一杯生きて大人になる。
明日に向かって、前を向いて走る。
カミナのように。
あの空を、天を目指して。