第1章 1部
私は違和感が無い程度に、ほんの少しだけ宴の輪から外れて座っている。皆を見回せるように。『彼』と会話出来る様に。
「完成したな」
酒瓶を一つこっそり置いたそこから声がする。
「うん…完成した」
小声でした返事と一緒にコップの飲み物を一口含む。今日は特別だからと注がれたほんの少しのアルコールが喉を熱く通った。
「一応聞くぜ。…返事は?」
カミナが酒瓶を手に取り一気に煽る。ごくごくと鳴る喉を見つめて、私は頷いた。
「…一緒には行かない」
「そうか」
濡れた口元を拭ってから、カミナが私を見下ろす。
「なんだかお前はそう言うんじゃねェかって思ってたよ」
「…そうなの?」
「ああ。何でだろうな。お前のやる事は俺に付いて来るって事じゃねェとは薄々感じてた」
独り言のように呟くカミナの声が喧騒の中静かに落ちていく。
返事はせず、私も立ち上がりカミナと並んだ。
「…何だか酔ったかも。少し歩こうかな」
「ああ。俺も行く」
宴の輪からそっと外れ、公園を二人で歩き出した。
何度も二人で歩いた夜の公園は、今日は賑やかで明るく、いつもの公園とは様子が違って落ち着かない。
「…お前には感謝してる」
押し黙って歩いていたカミナが唐突に口を開き、こちらを向いて言う。
「…感謝って」
それは私のほうだ、と言いかけた私の口をカミナは人差し指で押さえ遮った。
「黙って聞け。俺はお前に本当に感謝してるんだぜ。とっくにこの世に居ない俺を見つけてくれて、話せた。あまつさえシモン達に伝える事が出来た」
カミナの人差し指が移動し、私の頬に触れる。
「だけどな、ずっとこのままで良いなんて思っていない。が一緒に行かないって聞いて俺は正直ほっとしている」
「…?」
カミナの意図が分からなくて私は黙ったまま言葉を待った。