第1章 1部
「さんは何かをずっと考えているように見えます。まるでヨーコさんみたいです。そして…ヨーコさんは出て行ってしまいました」
あまり抑揚のない口調でニアが続けた。
「ヨーコさんが居なくなってしまい私は寂しいです。でもヨーコさんは何かをちゃんと考えて出て行かれました。それはすごくすごく応援したいんです」
「…うん。そうだね」
ヨーコは私にしか言っていかなかった。でもヨーコの気持ちはきちんとニアに届いているのが嬉しい。
「そうです、私も応援したい。だからさん」
「…何?」
ニアが私の方を向いた。不思議な色をした大きい瞳が私を覗き込む。
「さんのやりたい事、私にも応援させて下さい」
「…!!」
そうしてニアはにっこりと微笑んだ。
胸を衝かれるとはこういう事を言うのだろう。ニアの向ける真っ直ぐな目が私の気持ちに届いた気がした。
ニアに話したい。
ヨーコにも言えなかった、勿論カミナにも言えなかった事。
「…相談に、乗ってくれる?」
「はい!」
ニアが私の手の甲にそっと自分の手を載せる。私もその手に、もう一方の手を重ねた。
「あのねニア。私ね、好きな人が居るの」
「はい」
ニアがこくんと頷く。私の強張った音が分かったのか表情は真剣だ。
「ずっとずっと、好きだった人がるの」
強張った声音は喉を詰まらせる。名こそ出さないけれど、言ってしまったという思いと押し込めていた感情を悪いと思いつつニアにぶつけてしまう。
けれどもニアは頷き、受け止めてくれた。
「でもその人はすぐにいなくなっちゃって…だけども最近ね…再会できたの」
「それは良かったですね!」
ニアの顔が綻ぶ。
喜んでくれて嬉しい。けれども一旦解放した感情は思うように操作出来なくて、またニアにぶつけてしまった。