第1章 1部
一年と少し前の、そのもう少し後。
私は絶望の真ん中で喘いでいた。
カミナが居ない。
彼は遠いところへ行ってしまった。
初めて彼に会って話せて、そのほんの一日後に彼は行ってしまった。
グレンラガンの前では大グレン団の皆が涙を流している。
取り乱すシモン。立ち尽くすヨーコ。
キタンは歯噛みしていた。そして時々悔しそうに地面を蹴る。そして抜け殻のようになってしまった私の肩を叩く。大丈夫か、と。
思えばそれからずっと、私はそのままだった。
一歩も動けず、少しずつ先に進んでいく友人達を虚ろに見送るだけ。
私はカミナが好きだった。
地上に出たときに感じた太陽のような、空のような彼に憧れた。
この胸を焦がす感情が憧れなのか、それとも恋なのか。ちゃんと判別できないまま彼は逝ってしまった。
そうして空しく一年が過ぎ、『彼』に再会したのがはじまり。
「こんばんはさん」
「…ニア」
いつものように公園の噴水前のベンチ。
まだ水の入らない噴水をぼーっと眺めている私の前に、ニアが現れた。
「どうしたんですか、こんな夜過ぎに」
「ニアこそ」
「私はお散歩です」
そう言ってニアが微笑むと、周りの空気が柔らいだ気がした。
最近はカミナとは別行動している。何かを思い悩んでいる私を察してくれるのだろう。私が夜の散歩から帰宅する頃まで外出している。
「お隣失礼しますね」
礼儀正しく言い、ニアがベンチに腰掛けた。居住まいを正し正面の噴水に目をやる。
「公園。もうすぐ出来ますね」
「…うん。もうすぐだね」
二人で噴水に視線を向けた。
「ニアが作ろうって言った公園、素敵だね。私もこんな公園作れて嬉しいよ」
「私も嬉しいです。…ねえさん」
「なあに?」
噴水に目を向けたままニアが私の名を呼んだ。
「さんは、これからどうなさるんですか?」
「…え」
いきなり言われて驚いた。ニアは変わらず噴水を眺めている。