第1章 1部
キタンに手招きされ、『彼』の前に連れ出される。
「ようキタン。随分な別嬪さんと一緒じゃじゃねェか」
「ぶわぁーっか野郎。こいつはな、カミナ。お前に会いたくてここまで来たんだよ」
「へえ?」
『彼』がキタンと気安く話す横で、私は固まっていた。それに気付いたのか、キタンが私をぐいと彼の前に突き出す。
「ふーん。俺に会いに?」
じろじろと無遠慮に『彼』は私をねめつけた。そしてニッと口角を上げる。
「よう。俺の名前はカミナだ。お前の名前は?」
「は、はじめまして…、、です」
声にならない声で懸命に名を伝えた。伝わったのか『彼』は更に笑う。
「か。今日からお前もこの大グレン団の一員だ!!」
よろしくな! と『彼』…カミナが豪快に笑顔を見せた。
「良かったな!」
キタンが私の背中を叩く。
「…うん」
私もおずおずと、カミナとキタンに向かって微笑んだ。
憧れた人が、そこに居た。
この世界の見る目を変えてくれた人がそこに居た。
後になってキタンが、「カミナの話をした時のは、なんつーか…視点が変わったって顔してたなあ」と言っていた。
キタンは色々分かってくれていたようだ。私の憧れも、こっそりと燻っていた気持ちも。
そしてまだ見ぬ憧れだったカミナに対しての、急な現実感に戸惑っている私にも。
その日の夜は長かった。食事をしたり、皆のガンメンの最終確認をしたり。
シモンとヨーコともこの時初めて会った。二人とも私とほとんど同い年なのに、しっかり前を向いていて驚いた。
しかし、決戦前のちょっとした宴になった時は、シモンは端で困った顔で微笑んでいたし、ヨーコはなにやら難しい顔をしていたのが気になってはいた。
人の輪の中心で意気を上げるカミナが居る。
僅かな時間で知った彼は、強くて陽気で逞しい。
私が地上に出て来た時は、空に浮かぶ太陽の熱量に驚いたものだったが、カミナにはそれに近いものを感じる。
カミナはおひさま。
今はカミナを見る度に思うその感想を、最初に持ったのもこの時だった。